二の腕が痛む
肩の痛みでも、下図のように二の腕側の部分(三角筋の前側や後ろ側)、あるいは二の腕の中央から肘の近くまでの前側や後ろ側が痛む場合があります。(赤丸が痛む部分)
ひどくなると腕を曲げようとしても痛む、伸ばそうとしても痛む、という状態になります。
最初は時々痛む程度だったのが、悪化すると激痛で動かすことができなくなります。
実際に痛みを発しているのは二の腕から前腕をつなぐ筋肉、二の腕から肩をつなぐ筋肉です。
これらの筋肉がある原因によって伸縮性を失います。
そして伸縮性を失ったまま曲げ伸ばしの動作をし続けると、筋肉に多大な負荷がかかります。
そのため筋肉は次第に傷ついてしまうことになり、痛みになります。
ある原因とは、肩甲骨と肘の不具合です。
臨床経験からの推測ですが、最初に原因になるのは肩甲骨ではないかと思います。(個々の生活や仕事の中の動作が影響する事を考えると、肘が最初の原因になる場合もあるかと思います)
では肩甲骨がどのように二の腕の痛みを引き起こす原因になっているのでしょう。
二の腕が痛む理由
腕が体幹(胴体)とつながっている骨は、肩甲骨だけですから、肩甲骨は腕の動きにとても大きな役割を持っています。
中でも腕を微妙にコントロールしながら動かす、重い物を抱える、という動作をする時には肩甲骨は固定されます。
肩甲骨が背中にしっかりと固定されて土台になるから、腕に力を入れることができるんです。
ところが肩甲骨には、固定されるべき背中とは骨同士のつながりである関節はありません。
肩甲骨を固定するための筋肉だけが働いています。
※肩甲骨を動かす、固定する主な筋肉
ですから、腕を微妙にコントロールしながら動かす、重い物を抱える、というような動作を日常的に続けていると、その肩甲骨を固定する筋肉が疲労し、伸縮性が失われて肩甲骨がスムーズに動かなくなります。
肩甲骨がスムーズに動かないというのは、とてもまずいことです。
なぜなら、肩甲骨のもう一つの働きとして腕の可動域を広げるという役割があるからです。
私たちが腕をグルグル回せるのは、腕の関節だけではなく肩甲骨が一緒に動いているからです。
だから、肩甲骨の動きが悪くなるという事は腕の動きが制限されてしまうという事です。
肩甲骨が動かないと、腕は水平の位置までしか上げることができません。
更には、腕を後ろに回すということが全くできなくなります。
そして、肩甲骨が動かない分、他の所に負担がかかってきます。
一番負担を受けるのは、腕を動かすための筋肉です。
ほとんどの場合、肩甲骨の動きが悪いという自覚はありませんから、いつもと同じように腕を動かそうとします。
でもいつもと同じように動かそうとすると、いつもの何倍も筋肉に負担をかけてしまいます。
例えると、建付けのいい引き戸を開けるのに力はいりませんが、建付けの悪い引き戸を開けようとすると結構力が必要になります。
これと同じようなことが起こるわけです。
それでも、はじめのうちはそれほど不自然に感じずにいます。
正常な(健康な)筋肉は多少動きが悪くてもカバーしてしまうからです。
それが長い間続くうちに、筋肉は知らず知らずに疲労してきます。
疲労した筋肉は古くなったゴムチューブのように伸縮性がなくなっていきます。
伸縮性がなくなった筋肉は、防御反応を働かせてできるだけ筋肉を伸び縮みさせないように抵抗します。
このことがますます筋肉を疲労させていき、ボロボロに傷ついた状態になってしまうのです。
その間にもう一つ起こるのが、肘の関節の可動制限です。
二の腕の筋肉は、実は肘をまたいで前腕部にくっついているものがあります。
だから、筋肉に伸縮性がなくなってしまうと肘の関節も押さえつけられる形で動きづらくなってしまうのです。
肩の関節が動きづらく、肘の関節が動きづらくなれば、その間にある筋肉はその分の負担がかかるために疲労して傷つくしかなくなるのです。
こうして、二の腕の痛みは起こります。
二の腕の痛みを軽くするには
このように、結果的に二の腕の筋肉が傷ついて痛みを発していますが、原因は肩甲骨と肘にあります。
傷ついた筋肉を回復させるのはもちろんですが、肩甲骨と肘が普通通りに動くようにしてあげなければ、筋肉の回復も望めません。
【肩甲骨を動かす】
痛みが軽度で、動かしても大丈夫であれば、自分で肩甲骨を動かしてあげることからはじめます。
その際に注意することは、痛む二の腕を大きく使って動かしてはいけないという事です。
意識を肩甲骨に集中して、上下左右に動かしてあげましょう。
最初から大きく動かせなくてもかまいません。
少しずつ動かしていけば、徐々に動きが良くなっていきます。
もしも、少し動かすだけでも痛みが出る、痛くて動かせない場合には、専門家に任せた方が危険が少ないでしょう。
【肘関節を動かす】
肘関節は、肩甲骨が動くようになってからです。
肩甲骨が満足に動かないうちに動かそうとすると、かえって二の腕の筋肉をさらに傷めてしまいかねません。
また、腕の曲げ伸ばしその他の動作で肘が痛む場合には、関節に不具合があるので迷わずに専門家に任せましょう。
【傷ついた筋肉のケア】
セルフケアでの傷ついた筋肉の回復には『即時』はありません。
無理に動かしたり刺激を与えたりすれば、切り傷の閉じかけた切り口を開くようなもので、かえって悪化します。
ひたすら血液を循環させて酸素と栄養を送り込み、傷の回復に努めます。
血液を循環させるには、筋肉を動かす・温めるが適しています。
痛むほど動かさなくても、わずかでも動きがあるだけで徐々に回復していきますので、痛みがない程度にあせらずに動かしましょう。
絶対にしてはいけないのは、痛むほど動かしたり、押したり揉んだりすることと痛みが強まるほど温めることです。
痛むのは「それはやめて」という体からのメッセージです。
もしもセルフケアでなかなか楽にならない、もっと早く楽になりたい、と思ったら当院へどうぞ。
※画像はhttps://www.biodigitalhuman.com/から引用しました